2012年5月20日日曜日

無影灯(オペライト)

治療時に於いて処置部位を明るく照らす器具が無ければ患部をしっかり診る事が出来ませんが、単に明るく照らす事が出来れば良いという訳では無く、狭い口腔内を見る時には影の存在が邪魔になります。

デンタルミラーとピンセットのような細くて小さい器具だとそれらによる影も小さいので治療の邪魔にならないのですが、患者さんの口の中に直接手を入れる処置になると私の手に因って出来た影が治療の邪魔になる訳です。

そこで当院では口腔外科領域の親知らず抜歯やインプラント埋入手術等の時にはオペライトを使用しています。

こちらがユニットに備え付けの無影灯(名前だけで影が出来まくりなんですが・笑)です。こちらはよく見るライトですね。


比較の為にテーブルに置いた紙コップをほぼ同位置から照らしてみます。
(影が出来やすい様にあえて斜め上方から照らしてます)
こちらがユニットの無影灯で

こちらがオペライトです
影の大きさが全然違う事が判って頂けると思います。これは対象物を様々な方向から照らす事で影を打ち消し合う原理を利用しています。と言う事は直径が小さく灯数が少ないオペライトでは影を消す能力が弱い事になりますね。ですので機種選定には製造元に直接足を運んで直径60cmの6灯式を選択しました。これは44cmの3灯だと照度の点では充分だったのですが無影性を重視したい私には満足出来る無影が得られなかったのと、80cmでは大きすぎて片手で動かせなかった事に因ります。また1灯のユニットの無影灯と6灯のオペライトでは明るさが全く違うので処置時の目の疲れが違います。

その他に影が出来ない照明としてはマイクロスコープとルーペに装着しているライトが有り、こちらは瞳孔間に照明が有る事で影は全く出来ませんが、視野が限られる為に(拡大治療の宿命です)大きな視野で処置をしたい場合には使えません。しかし限られた範囲の歯周外科や歯根端切除術などは目を大きく動かす事も無いので、細かい所が大きく見える利点も相まって、こちらを使用する事が多いです。

余談ですが、オペライトは手術時に使用する事を想定したライトなので、上記の写真には写っていませんが、真ん中に滅菌可能なハンドルをワンタッチで脱着出来る様になっており、清潔域の人間が安心してライトの位置を調整出来るようになっています。リフォーム前はユニットの無影灯でオペを行っていましたが、グリップが滅菌出来ないので滅菌したアルミホイルを巻かない限りオペレータや滅菌アシは直接触る事が出来ません。影が出来やすい上に清潔域の確保が不安定なアルミホイルなので、オペレータや滅菌アシがしょっちゅう触る割りにはアルミホイルが破けてグローブが不潔域になり、術中にグローブ交換…の無駄な時間と集中力が途切れるのがストレスだったので、改装時には絶対に欲しい器具の一つでした。(清潔・不潔の概念の詳細についてはこちらもご覧下さい

しかし、これを取り付けるには壁か天井に補強工事が必要になります。当院ではリフォーム時にこのライトの為だけに梁を1本増やしました。何も考えずに取り付けると多分天井が抜けます。スタンドタイプもありますが使い勝手が悪いので、天井を剥がす工事を行ってでも備え付けの方が便利です。