2012年1月2日月曜日

マイクロスコープとルーペの違い

以前にマイクロスコープとルーペを使用している事をお話ししました。
マイクロスコープとルーペは拡大して患部を見る機器という意味では
変わりは無いのですが、使用感は違います。














マイクロスコープは
  • ルーペより圧倒的な拡大率で患部を見る事が出来、また拡大率を変化させる事が出来る
  • 背筋を伸ばした姿勢で治療を行う事が出来るので、長時間の診療でも術者の首と腰の負担が軽減出来る
  • 術者が見ている像を静止画や動画で保存する事が出来るので、患者さんへの説明で治療内容を理解して貰いやすい
等の利点が有りますが、欠点として
  • 当院では固定設置しているので、マイクロを使える場所が限られる
  • 鏡筒が固定されているので患部を色々な方向から即座に見る事が出来ない
  • 患者さんが動いた場合にはその都度ピント合わせが必要なので、小児の治療には向かない
が有ります。














ルーペの利点・欠点はその逆になり、利点は
  • 気軽に持ち運びが出来るのでユニット間の移動が可能な事
  • 患部を様々な方向から即座に見る事が出来る事
ですが、欠点としては
  • 私が使用しているレンズがケプラー式なので一般的なガレリアン式より重く、目の前に装着する事による重量的なアンバランス
  • 下を向き続ける事
により長時間の治療では首が疲れる事を感じています。

しかし一般的なルーペでは欠点となる、明瞭な視野確保の問題は
(ユニットに設置しているライトや額部のライトで患部を見ると影が出るので
始終ライトを動かす事になる)
左右のレンズの間に光源を装着した事で、見たい方向と光軸が同軸になり、
マイクロスコープと同じ様に術野に影が出来る事が有りません。
また通常品のルーペにライトをクリップするタイプでは、ルーペを跳ね上げると
ライトも上を向いてしまい、明視野と暗視野を交互に見る事になりますが、
私が使っているルーペはライトが上を向かない(患部を照らし続ける)様に
改良しているので、CR充填の色合わせ等で拡大と肉眼を交互に見比べる時に
目が疲れにくい利点が有ります。
【注:同軸と跳ね上げ機能は個別には市販された物が有りますが
同時機能は個人的に改良を加えたので一般には売っていないと思います】

上記の事から私は根管治療や小さな虫歯、歯髄ギリギリの虫歯治療には
マイクロスコープを用いて
平行性を確認しながら削る事が必要な、ブリッジや被せ物の形成には
ルーペを用いる事が多いです。

では拡大治療に欠点は無いのでしょうか?
実は治療中は患部しか見えていないために患者さんが痛そうな顔をしたり、
軽く手を上げても私には全く見えないんですね。
ですので、拡大治療中に何かアピールしたい事が有った時には
大きく手を上げて貰う必要が有るのです。

余談ですが、私がルーペを使い始めた頃は先生方にも存在を知られて居らず
周りの先生に勧めても「まだ老眼じゃないから肉眼で充分」と言われたり
治療を始める際にルーペを被ると患者さんに「手術でも始まるんですかっ!」
と驚かれた事が何度も有り、懐かしく思い出されます。
これからは拡大治療が一般的になっていくと思います。
私はもう肉眼治療には戻れません。


P.S. これから拡大治療を考えている先生へ
私の正直な感想として2倍、2.5倍の倍率では肉眼と殆ど変わりません。
患者さんにパフォーマンスアピールは出来ても本当の拡大メリットは感じられません。
私がルーペを使い始めた時にガレリアンの2.5倍は購入後半日で慣れてしまい、
数日後に4倍を買い足しました。現在2.5倍は引き出しの奥で眠っており、
私には無駄な投資でした。またルーペにセットするライト(照明)は必需品です。
2.5倍でユニット備え付けの照明では肉眼治療と何ら変わりません。

それ以上の倍率になると被写界深度が浅くなり使い勝手が悪くなったので
それ以上の倍率を望む場合にはマイクロスコープをお勧めします。
またマイクロスコープには視度調整機能があるため、私のようにガチャ目だと
長時間の治療時には目の疲れが違います。

しかしマイクロスコープは
  • 治療中は前を向きながら手元を動かす動作なので、プリズム眼鏡を掛けて治療を行う様なイメージになる事
  • ミラーテクニックが必須である事
から使いこなす為には訓練が必要なために、ヘタをすると
高額な診療室のオブジェと化す可能性があるため、
ルーペから導入して拡大治療に馴染んでいくのも手だと思います。
ルーペは肉眼治療の延長なので導入のハードルは低いですし
今では数万円から入手出来ますから。
私がルーペを買った時は50万円近くしたのに…(; ;)ホロホロ