2012年5月23日水曜日

清潔と不潔・滅菌と消毒(その3)

清潔と不潔・滅菌と消毒(その1)(その2)の続きです。(その1からお読み下さい)


その1でヒトの皮膚や口腔粘膜を滅菌する事は出来ないと書きましたが、じゃあ何もしなくて良いのか?と言うとそんな事は無く、術野やオペレータ・滅菌アシの手は菌が存在しても弱らせて感染能力を有しない状態にする、消毒の必要が有るんですね。幾ら器具を滅菌してドレーピングをして清潔になりました!と言っても、肝心の手術部位に活発な悪玉菌が存在していたらアッと言う間にそこら中が不潔野になって、切開した場所に悪玉菌を塗り込んでいる事と同じなのは、ここまで読んでくれた方には判って貰えると思います。なのでウチで手術を受けた患者さんは経験していますが、少しピリピリした水でうがいをして、また鼻からアゴ下までと口の中を拭いたと思います。その水の正体は強酸性水と言って、ヒトには無害だけれど殆どの微生物を死滅させる事が出来る水なんですね。但し芽胞は殺せないので消毒なんです。

そしてインプラントの埋入オペの前に私と西浦さんが手から肘まで手洗いをして、その後もう一人のアシスタントに手術着を着せて貰っているのを見た事が有る患者さんも居ると思いますが、これは手は消毒されただけで滅菌されておらず、また肘〜手以外の部位は消毒もされていない為に直接手術着の表側を触る事が出来ず、外側を触らないように注意しながら着せて貰っているんですね。その他にも滅菌グローブの填め方やドレープを掛ける順番など、それぞれに決められたルールが有ります。それらを達成して清潔域が確保されてからやっと手術スタートとなる訳です。

しかし一般歯科治療では消毒レベルで問題無い為にここまでやりませんが、普段はセイケツ域とフケツ域を区別して治療を行っています。消毒された不潔は良いとしても他人の唾液や血液が付着したフケツな環境下での治療は院内感染の点から大いに問題が有りますからね。だからグローブ、紙コップの使い捨て、タービン・コントラの患者さん毎の滅菌等々が必要なんです。

グローブの使い回しなどテキトーな衛生概念で行動している人が、いざ手術だ!となった時にアタマとカラダが反応出来ると私には思えないので、普段から清潔・不潔の概念を考慮しながら行動する必要が有ります。少なくとも私のオペ現場ではオペの内容そのものに集中したいので清潔・不潔に気を取られたくない。だからアタマで考えなくてもカラダが反応出来る様にしておきたいのです。人が倒れたら即座に正確なCPRと正しいAEDの使用が出来る様に何度も反復練習するのと同じです。

ここまで読んでくれれば誰だって、下がった靴下を持ち上げたグローブで自分の口の中を弄って欲しくないですよね? また床に落ちたモノを拾った手で治療続行して欲しくないですよね? 何故ならその手は消毒されていないからです。なので足グセで書いた様に、当院では落とした人が拾わない!と言うルールが有るんです。

長文になりましたが、清潔域と不潔域、また当院の滅菌と消毒の取り組み方について御理解してもらえれば幸いです。