2012年5月29日火曜日

歯牙移植の講演会

日曜日に野田市歯科医師会主催の研修会に出席しました。、演者が歯牙移植で草分けの下地勲先生で、演題が「自家歯牙移植とインプラントの使い分け」だったので、「これは行かねばっ!」と思い、かなり前からこの日を楽しみにしていました。

内容は歯牙移植だけにとどまらず、ルートエクストルージョン(歯肉の下まで虫歯になった歯の根っこを引っ張り出す治療)や外科的挺出(一度歯を抜いて元の状態より引っ張り出した状態で再植する治療)の話も出て、個人的には楽しい時間でした。下地先生の「安易にインプラントに頼らず、もっと歯の保存に努めるべき」の発言には私の日常診療の気持ちを代弁してくれた様で嬉しかったですね。私自身も「歯を失う時に思い出して欲しい話」当院のHPでも書いている様に歯牙移植やルートエクストルージョンを積極的に取り入れているので、他院で「インプラントしか治療法が無い」と言われた患者さんに歯牙移植や歯牙挺出術を行った事は何度も有ります。

確かに同一形態の工業製品であり術式が規格化・簡素化されているインプラントと、同じ形のモノが一つも無い歯牙移植では、術前のシュミレーション通りに事が進まずオペ中に計画変更の判断をせねばならない事が有ったり、レシピエントサイト(移植歯を埋める場所)にインプラント床以上の骨穴を開けねばならなかったり、とインプラントのオペより難しい一面が有るにも係わらず、保険治療の範囲で行う歯牙移植は保険点数が低く抑えられている為に正直な話では実入りが少ないなど、開業医には手を出しにくい面が有るのも理解出来ます。また保険適応外の歯牙移植でもインプラントのオペより数倍難しいのに収入は数分の1しか入らず、経営面から泣きたくなる事は多々有ります(笑)。しかしインプラントには無くて移植歯には有る歯根膜が咬む力をコントロールしたり炎症の波及に対する防御反応が強い等々、インプラントに勝る数々の利点をもたらしてくれるので患者さんにはメリットが多いと思います。但しドナー(移植歯)が無かったりレシピエントサイトにドナーを受け入れる環境になっていない時には歯牙移植は出来ませんから、しっかり食べ物を噛みたいと言う患者さんにはインプラントがセカンドチョイスになりますね。

余談ですが、この研修会の翌日に歯牙移植のオペがあり「やっぱり、これ良いわ!」と思いながら手を動かしてました。難しいオペだったので時間が掛かってしまい患者さんも大変でしたが、色んな歯医者で歯牙移植を断られてウチに辿り着いた患者さんだったので、数ヶ月後に笑顔を見せてくれると歯医者冥利に尽きるんですけどね(笑