2012年6月15日金曜日

歯の銀行

歯牙移植の講演会歯を失う時に思い出して欲しい話当院のHPで書いたように、当院では歯牙移植や歯牙再植を積極的に行っています。

インプラントが人工歯根ならば移植歯・再植歯は天然歯根と言い換える事が出来ます。インプラントは工業製品で有り、γ線で滅菌されたアンプルの中に入っているので滅菌有効期限内で有れば保存・保管が出来ますが、移植歯は天然物で有るが故に一般的なデメリットとして保存が利かないんですね。時々抜歯してから数ヶ月〜数年経った親知らずを持って「この歯を移植に使って下さい」と来院される方が居るのですが、移植歯は根っこの回りに歯根膜細胞が新鮮な状態で残っている事が条件なので、根っこが乾燥しているとこの細胞が死んでしまっているために使えないんです。(同じ理由で根っこをグリグリして抜いた歯も使えない事が多いのです。この場合には歯根膜保存の為に根っこをグリグリせずに骨を砕いて抜歯します)

ところが逆に言えば、抜いた歯の歯根膜細胞が生きた状態で保存する事が出来るのであれば、 抜歯直後で無くても移植歯として利用が出来る事になりますね。これを可能にしているのが凍結保存の技術なんです。当院では再生医療研究所と提携しており、患者さんの希望があれば矯正治療時の抜歯や親知らずの抜歯の時に、歯を保存しております。

歯を半永久的に保存しておくメリットとして、移植の他には
  • 事件や事故、災害時においてDNA鑑定による個人特定が容易になる
  • 歯の幹細胞を活用して将来病気の治療に役立つ可能性がある(幹細胞は様々な臓器や器官に分化出来る事が判っています)
費用ですが、保管料が1歯につき88,000円/10年、延長保管料が30,000円/10年となります。複数本の場合には割引制度があります。(因みに私自身は斡旋しているだけで再生医療研究所と金銭の授受はありません)

また別途に撮影料(10,500円)が掛かりますが、CT撮影を抜歯直前に行っておけば将来保存した歯を用いて移植を行う際に、事前に歯の大きさや歯根の形が把握出来ているので、現物会わせで歯牙移植の治療を行う事が少なくなります。

これから再生医療の分野は進化が加速していくと思いますが、この技術が臨床に下りてきた場合に幹細胞が豊富な歯があると非常に有望だと思います。根未完成歯ならば更に有利ですね。こうなると保存した歯から神経や骨に分化させる事も可能になるかも知れないので、将来が楽しみな技術なんです。